本アトリエの「一般教室」は同じ開講枠に、生徒さんそれぞれの画材・様式・テーマで制作を進めていただいています。水彩で静物画の方もいれば、アクリルでイラストの方もいれば、油彩で名画の模写の方もいる、というかたちです。
✤
H.S.さんは昨年は、水彩とアクリルで「風景画」にいそしんでおられました。お住まい近隣で見つけたモティーフ:川辺や道野辺の情景をスケッチをして、アトリエで《デッサン補強》《明暗バランス調整》などの肉付けを加える制作をしました。昨年6月の「教室展」にも3点の水彩・アクリル画を出品。
H.S.さんはゴッホをこよなく愛する人でもあります。独・タッシェン社のどっしりした『ゴッホ全集』をアトリエに預けています。これまで、星空の『夜のカフェテラス』、赤と黄の鮮烈な『夜のカフェ』などを模写制作しました。
以下はアトリエにいらした際、断片的に聞かせていただいてきたことです。― 絵は3年前から始められました。お若いころは、各地の険しい山を選んで登り、何度もクライマーズ・ハイを体験したという、登山を趣味とされていた肉体派だったそうです。
実は、3.11大震災で、H.S.さんは津波にご自宅を流される、大変な体験をされたおひとりでした。幸いご家族はみなさんご無事だったとのこと。・・・壮絶な被災体験からの数か月間のうちに「「絵を描きたい」という衝動が沸き起こったのだそうです。
満を持して、3か月前から油彩を描きはじめました。いまは油彩2点目として、ゴッホ『アルルを望む、花咲く果樹園』を模写しています。ゴッホの彩色のレシピを探しながら、油彩の混色についての試行錯誤を楽しんでおられます。
いずれはご自身のモティーフで油彩風景を描かれることでしょう。
✤
絵の学びは模写にあり―。私は、心惹かれる名画の模写をお勧めしています。先人の「構図」「色使い」を学べるからです。
より深い模写は、作者の制作を辿ることになります。技法とともに、作品の時間的な「構造」をひも解く、実にスリリングで楽しい体験です。
そして模写は内面的には、心惹かれたその作者との無言の対話です。それはクライマーズ・ハイと瞑想の間にある、日常を超えた「無我」の体験にもなります。
0 件のコメント:
コメントを投稿